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北京旅行の帰り機内で発症したH5N1の死亡例。怖いですね。

先進国で発生した鳥インフルエンザH5N1 「カナダで第1例」の波紋

2014/1/17日経メディカル
関西福祉大学 勝田吉彰氏
 2014年は年明け早々、世界を緊張させるニュースで始まった。カナダで鳥インフルエンザH5N1型ヒト感染例報告。先進国で初発したこのケース、情報発信の面でこれまでのケースとかなり異なる展開をみせて世界中のウォッチャーの注目を集めた。

 症例は20歳代女性、看護師さんだ。北京旅行の帰路の12月27日、機内で発症して急速進行し肺炎と脳髄膜炎を発症して、2014年1月3日に帰らぬ人となった。

  H5N1と言えば、かつてのインドネシアとエジプトから、2013年にはカンボジアに発生の中心が移ったかのような印象だが、いずれにしてもその情報は限 られたステレオタイプなものがほとんどだった。しかし、カナダ国内の第1例とあって、先進国の医療関係者もマスコミも張り切り、かなりのスピード感をもっ て、これまであまり報じられてこなかったような内容も発信されてくるところとなった。

極めて迅速に発信された経過報告

 死亡からわずか12日目という驚くべきスピードで詳細な症例報告がアップされた1)2)。以下、ポイントを紹介する。

* 昨年2013年12月27日、北京からカナダへの機中にて「悪寒・発熱・胸痛」で発症。
* 翌28日に救急受診。胸部X線とCTで肺炎を示唆され、抗生剤処方をうけて帰宅。
* 2014年1月1日、「胸痛の悪化と呼吸困難、頭痛、嘔吐など」のため再受診。X線で「肺炎の増悪」が認められたので入院となる。
* 1月2日に「視覚障害と呼吸状態悪化(O2必要量の増加)のためICUへ。人工呼吸器装着。
* 1月3日に「頻脈突発、重度高血圧」からその後一転、「低血圧」へ。心拍維持処置要する状態に。この時点で「瞳孔散大、痛み刺激消失」。CTで「脳炎所見、頭蓋内圧高進、脳死判定」となる。MRIで「脳浮腫、髄膜炎。脳血流低下」。

 急速な経過で肺炎と脳髄膜炎併発し、薬石効なく・・・となった。

 注目されるのは、診察医が、カナダでは前例がなく、世界的にもかつての勢いがなく、北京でも最近発生をみていないH5N1を迅速に疑ったことだ。

 診察医は「最初、鳥インフルエンザではなさそうだと思った。しかし患者の旅行歴と神経症状から見て可能性があると思った」ので1月3日に地元保健当局に届け出ている。この極めて冴えた判断が、今回の迅速な把握・情報発信へと結びついている。

 旅行先は北京、筆者の前職、外務省時代の最後の任地だ。実は北京の生活をなまじっか知っていると、かえってこの発想には結び付きにくい。かの地では、先進国からの外国人(および富裕層)は、一般庶民層とは異なった行動パターン、行動範囲をとる。世界が違うのだ。

  H7N9でも注視されている「生鳥市場」で、糞便宙を舞う中で鳥類と触れ合ったりすることはまずなく、先進国同様に高級スーパーで冷蔵冷凍パックを購入し て使う。道端で弱った鳥や死んだ鳥を持ち帰ることも、もちろんない。屋台で1杯60円の麺や焼き鳥をほおばることもなかろう。たとえば市場の鶏からウイル ス検出されたH7N9が、市場など出入りしない富裕層にほとんど感染していないのと同様だ(H7N9の感染者リストの大部分は年金生活者やブルーカラー 層)。実際に鳥との接触歴はない3)

 正直に告白しよう。もし筆者がこの初診医だったら、まずH5N1は疑っておらず、こんなに迅速な情報発信には至っていなかっただろうと。

家族が声明発表

  これまた先進国であることを実感するのが、プライバシーのほど良い取り扱われ方だ。家族が地元保健当局を通じて公式声明を発表し、それを地元紙が報じてい る。王某とか李某とか名字だけ中途半端に当局発表される国やフルネームがネットメディアで世界に発信されてしまう国とは、一線を画している。

  かといって「何でも特定秘密状態」でメディアスクラムの火がつくこともない。世間の知る権利がある程度確保されているのだ。20代後半の今回の犠牲者は Red deerで看護師資格を取得し、Red deer病院のオペ室ナースとして勤務している。勤勉で独立性旺盛,情熱的な女性だった。同僚たちは彼女のことを部屋の灯りのようだと言っていた。1年半 前に結婚している。今回は前々から楽しみにして貯金して、母親と一緒の北京旅行だった・・・と。

 最後はプライバシー要請で締めくくられている4)。ご冥福をお祈りしたい。

■参考
1)Report details brain complications in Canada's H5N1 case
2)AVIAN INFLUENZA, HUMAN (13): CANADA ex CHINA (BEIJING), H5N1, FATAL, CASE REPORT
3) H5N1 patient was young woman; US preparedness funding; Jump in chikungunya cases; Anthrax in republic of Georgia
4) Family of H5N1 victim issues public statement

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