実用化して欲しい!
インフルエンザの次世代経鼻ワクチンを開発中 naturejapanjobs 2015年2月26日 国立感染症研究所感染病理部 長谷川秀樹部長 「わざわざインフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザにかかってしまった」という声を聞いたことはないだろうか。風疹や麻疹に代表され るように、ワクチンを打てば、ほとんどの人が一生その感染症にかからないと思われがちだが、インフルエンザに関してはそうはいかない。現在のインフルエン ザワクチンはインフルエンザにかからないためのものではなく、重症化させないことが目的とされている。これは、インフルエンザウイルスは種類が多く、変異 が激しいため、また急性の感染症でそれにワクチンが対応できないからだ。インフルエンザワクチンの候補株は1年前の予測に基づいて決められており、予測が はずれたときやウイルスが大きく変異した場合には効果が落ちることもある。もちろん流行株を予測できない新型インフルエンザは現状のワクチンで感染を予防 できない。 国立感染症研究所感染病理部の長谷川秀樹部長は、“インフルエンザにかからない”“インフルエンザウイルスの変異にも対応できる(交叉防御能のあ る)”“新型インフルエンザにも使える”“副反応の少ない”次世代ワクチンの研究の第一人者で、健康な人に参加してもらう臨床研究で成果を上げている。 粘膜表面での抗体応答: インフルエンザウイルスには主に粘膜上の分泌型IgA抗体が対抗する。 拡大する 長谷川部長が研究しているのは鼻の粘膜に噴霧する経鼻ワクチン。現在、日本ではインフルエンザワクチンは注射しか承認されておらず、米国で2003 年に承認された経鼻ワクチンはインフルエンザウイルスを弱毒化した生ワクチンで、発熱などの副反応があり、2歳から49歳にしか使えない。 では、なぜ経鼻ワクチンなのか。一つの理由はもともとインフルエンザウイルスがせきやくしゃみなどの飛沫を通じ、鼻や口、喉といった上気道から感染 するからだ。このような経路から自然感染した場合には、主に粘膜で分泌型IgA抗体が分泌され、血液中でIgG抗体が増えて、ウイルスやウイルスに乗っ取 られた細胞に対応する(図上)。この自然感染の免疫応答は、不活化ワクチンの皮下注射より...