現政権は経団連の方だけを観ているようだ。酷い物だ。

「高度プロフェッショナル制度」の騙し討ちに先々泣くのは、年収400万〜500万円のサラリーマン世帯<夏の怒りのデス・ロード> - 荻原 博子


Zdenek Sasek/iStock
日本がもはや法治国家ではない事が明らかになったのが、政府ゴリ押しの「働き方改革関連法案」の強行採決でしょう。

中でも、悪評高い「高度プロフェッショナル制度(以下、高プロ)」については、当初「時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応えるため」ということを根拠として法律案を提出しながら、実は、その根拠がどこにもなく嘘だったことが発覚しています。
安倍総理や加藤厚生労働大臣が繰り返し説明していた、法律を作る根拠となる立法事実は「労働者のニーズ」でした。これについて「具体的にどんなニーズがあるのか」を野党が再三問いただし、やっと出してきたのが、12人からヒアリングしたというデータ。

12人というのは、いかにも少ないと思いますが、実はこのうち9人は、野党に問い詰められた後に泥縄式で行ったヒアリングだったことがバレ、残り3人についても、高プロの対象者でなかったり、法律をつくる時点では聞いていないことがわかり、結局、「労働者のニーズ」というのは政府のでっち上げだったことが露呈されてしまいました。

つまり、法律としての根拠がないのですから、普通は「嘘でした、ごめんなさい」と謝って法律を取り下げるのが筋ですが、逆に安倍総理は開き直り、「高プロは「(労働者のニーズではなく)経済界や学識経験者から制度創設の意見があり、日本再興戦略に置いて取りまとめられたもの」と言い放ちました。

この、今までとはまったく逆の発言には、さすがに驚きましたが。
日本では、日本国憲法で憲法27条の2項で「賃金、就労時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と定められています。

ですから、過労死するほどの無茶苦茶な働かせ方は法律違反ということになっていました。なぜ、こうした条項ができたのかといえば、戦前の日本には、「蟹工船」に象徴される劣悪な状況で休むことも許されず働かされ続ける人が多くいたからです。
ところが、それでは企業が儲からないということで、竹中平蔵パソナ会長など「経済界のニーズ」で、「蟹工船」的な働かせ方を復活しようというのが「高プロ」です。
竹中氏は、「時間内に仕事を終えられない、生産性の低い人に残業代という補助金を出すのは一般論としておかしい」と言っています。残業代というのは、仕事のできない人間に会社が仕方なく恵んであげている補助金ということ。

そんなものは、一銭も出したくないということで、この「経済界のニーズ」が、実は、この法律の根拠であることを首相自ら認めたのですが、そうであれば当初の立法事実は崩れてしまっているのですから、法案として成立するはずがありません。
ところが、そんなことはおかまいなしに、嘘八百を並び立てて数の力で法案を押しとおす。まさに、これは倫理観が欠如した安倍内閣にしかできないことでしょう。

“経営者ニーズ”で、低賃金・長時間労働が合法化される、やりたい放題の制度

そもそも、「高プロ」とはどんな制度なのでしょう。
多くの方は、「年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタントなど限られた専門知識を持った人が対象」なので、私には関係ないと思っているかもしれません。

しかも政府が「労働時間や休日、深夜の時間外労働の残業代を無くし、自由な働き方ができるようにするための制度」だと宣伝しているので、そんな働き方もあっていいよねくらいに思っているかもしれません。
けれど、この法案のどこにも、年収1075万円以上などとは書かれていません。

書かれているのは、「労働契約により見込まれる賃金の額を1年あたりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること」(第四十一条の二の二のロ)ということ。
簡単にいうと、厚生労働省が毎月行っている「決まって支給する給与」の3倍の額以上ということで、計算すると年収950万円くらい。

でも、それだと政府が説明する年間1075万円との間には124万円の差がありますが、これは法案の中に「厚生労働省令で定める額」とあり、厚生労働省が勝手に決められます。

仮に、厚生労働省の審議会などで「124万円も上乗せすることない、1円でいいよね」ということになったら、国会の審議など通さなくても対象者はすぐに年収1075万円以上ではなく年収950万円以上になります。
しかも、「労働契約により見込まれる賃金の額を1年あたりの賃金の額に換算した額」なので、実際にはこれだけもらっていなくても、1ヶ月だけ月90万円で働くという契約さえしていればいいのです。
「高プロ」では、時間外労働や長時間労働、残業代を支払わないなどという行為は、すべて合法化されています。

ですから、1ヶ月に4日だけ休ませれば、あとは24時間休みなく働かせることも可能。それで過労死したとしても、そもそも「高プロ」では残業代ゼロで働かせ放題が合法なのですから、過労死認定されない可能性があります。
なぜ、過労死遺族の会の方々が、国会の前に連日座り込み、安倍首相に法案の取り下げを求め続けているかといえば、自分たちの家族のように過労死する人を救いたいという思いからです。
「でも、月90万円もらえるなら、悪くないじゃないか」と思う人もおられるかと思いますが、問題は、法律に「労働契約により見込まれる賃金の額」とあるところ。90万円支払うというのではなく、90万円の契約をしていればいいのです。

契約ですから、仕事ができなかったら当然ながらペナルティーもあります。つまり、絶対にこなせない量の仕事を与えて、「あなたはこちらが期待した仕事の半分しかできてないから、今月40万円しか払いませんから」ということが、簡単にできてしまうということ。
「経営者のニーズ」に沿った法律ですから、会社を儲けさせる抜け穴は、ふんだんに盛り込まれています。

「派遣法(1986年施行)」もはじめは対象が13業種だけだった

「高プロ」の対象者は、「一部の高度な専門職」と思い込んでいる人もいるようですが、対象となる職種は法律には書き込まれていません。国会に図らなくても、厚生労働省の省令でいくらでも拡大できるようになっています。
「だからと言って、どんどん業種を拡大していくことはないだろう」と思ったら、甘い。最初は「一部の専門家」が対象だったはずなのに、気がついたらみんなが対象となっていた「労働者派遣法」を見れば、拡大に歯止めがかからないことがわかります。
「労働者派遣法」は、1986年に施行された法律で、当初は、1日5万円くらい稼ぐ高度な技術を持った通訳やソフトウェア開発など専門的な13業種が対象でした。

ところが、政令(国会を通さない内閣の指示)で機械設計など3業種を加えた16業種になり、1996年には26業種に拡大され、1999年には派遣業種を原則自由化されました。

ただ、この時点では、病院・診療所での医療業務や建設業務、警備業務などいくつかの業務は派遣では支障が出るということで禁止されていましたが、その後、皆さんご承知のように「だれでも派遣」になりました。
結果、派遣社員は、正社員よりも一段低い待遇になってしまいました。
同じように、「高プロ」も省令で職種を広げられるので、「労働者派遣法」と同じように、将来は誰でも対象になっていく可能性があります。
「高プロ」は、経済界のためにつくられた制度です。経団連はかつて、「高プロ(以前のホワイトカーイグゼンプションの時)」対象者は年収400万円以上」と言っていましたから、こうした方向で、適用対象者の年収のハードルも下げられていく可能性があります。
「労働者派遣法」は、非正規を都合よく働かせる法律になりましたが、「高プロ」は、「労働者派遣法」では縛れない社員を、うまく縛る法律になりそうです。しかも、派遣社員は現行の労働基準で働き方を守られますが、高プロは今までの労働基準が適用されません。
ですから、いつか「派遣社員は大変だけど、でも「高プロ」よりはマシ」という時代が来るかもしれません。

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