SARSも忘れてはいけない。

米国で初のMERS感染者、SARSの「悪夢」再び

2014年 05月 5日 17:07 JST


[シカゴ 4日 ロイター] - 2003年2月、香港からカナダのトロントに到着した女性からSARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスへの感染が確認された後、同市域内の病院では感染が瞬く間に拡大。257人に感染し、33人が死亡するに至った。
このときのことは、米疾病対策センター(CDC)のマイケル・ベル博士の脳裏に焼き付いている。CDCは先週、SARSウイルスに似た 新型コロナウイルス「中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス」感染が米国内で初めて確認されたインディアナ州の病院に感染症の専門家を派遣した。
ベル博士はロイターの独占インタビューに対し「われわれはとても深刻に受け止めている」とし、「最悪の事態では、急速に感染が拡大する 恐れがある」と指摘。「トロントでのSARSウイルス感染から言えることは、ウイルスが医療施設へと感染し、深刻な症状や死へとつながる可能性があるとい うこと」だと懸念を示した。
インディアナ州の保健当局によれば、MERSに感染した男性の体調は良好で、日々回復している。同ウイルスに接触した可能性のある病院 職員は自宅で隔離され、肺炎のような症状が発症しないか観察下にあるという。MERSウイルスの潜伏期間は一般的に約2週間とみられている。
MERSに感染したこの男性は医療従事者で、2012年にMERSウイルスの感染が世界で初めて確認されたサウジアラビアの医療施設で 働いた後、4月28日にイリノイ州シカゴから南に車で約30分のところにあるインディアナ州ミュンスターの病院に入院した。これまで世界保健機関 (WHO)に報告された感染者数は12カ国で262人に上る。さらに100人の感染者が各国の保健省によって確認されており、93人が感染により死亡し た。
男性は、サウジアラビアの首都リヤド発ロンドン経由シカゴ行きの航空機に搭乗。その後、シカゴからバスでインディアナ州の都市へと移動 した。都市名は明らかにされていない。米保健当局は現在、乗客名簿を確認中で、男性の席近くにいた可能性のある人に連絡を取っているとしている。
<細心の注意必要>
院内感染を防ぐために、男性は隔離された病室で治療を受けており、空気はフィルターを通して外に出るようになっている。
 
ベル博士はこの措置について「ウイルスが空気感染しやすいというだけでなく、万全を期すため」だと話した。
この部屋に入室するには、室内の浮遊微小粒子を吸い込むのを防ぐために保護マスクを着用しなくてはならない。
MERSウイルスはまた、患者の排せつ物への接触から感染することもある。専門家チームは感染の可能性のあるあらゆる物を部屋から出さ ないよう措置を講じており、ベル博士は、入室前に着用したガウンと手袋は退室する前に室内で脱ぎ、その後念入りにアルコールジェルや石けんで手を洗う必要 があると述べた。
さらには、涙管は喉に通じているため、医療従事者はゴーグルもしくは顔を覆うマスクを身に着け、目に飛沫が入らないよう注意している。
こうした措置はさまざまな感染症を治療するための一般的な手順の一部であり、ベル博士は「病院にとって慣れている処置だが、今回のケースでは極めて細心の注意を払い、確実に行う必要がある」と強調した。
ベル博士はまた、医療従事者は病院内では、インフルエンザや下痢性疾患など何らかの感染症に感染するリスクにさらされていることを理解していると指摘した。
感染防止への最善の努力にもかかわらず、病院は依然として主な感染源であり、CDCはこの3月、米国内の病院の入院患者約25人に1人が院内感染していると報告している。


MERSウイルスに感染した前述の男性は、発熱と呼吸障害を訴えて病院の救急外来に自らやって来た。こうした場合、病院が取る一般的な手順として、患者にマスクを着用させ、隔離する。ベル博士によると、この男性も直ちに隔離された部屋に収容されたという。
MERSを治療できる特定薬剤はないが、酸素治療など同ウイルスを撃退する一助となり得る基本的な治療法はある。
CDCは疾病予防の専門家に加え、いまだ理解に乏しいMERSウイルスを研究するため、男性が入院する病院にウイルス学者のチームも派遣した。
MERSウイルスの感染方法はいまだ不明だが、確かなのは同ウイルスが患者と接触した個人の間で感染する可能性があるということだ。
ただ、ベル博士は「良いニュースは、非常にデリケートな膜で覆われたウイルスは、消毒剤によってすぐに不活化しやすい」と指摘した。
とはいえ、今年3月以降、サウジアラビアでの感染症例数は急増。ベル博士はこれについて、ウイルスが感染しやすく変異している結果なの か、それともただ単に保健当局に報告される件数が増加しているだけなのかは分からないとし、「ウイルスを特徴付けるのはまだ時期尚早」だと述べた。
CDCは現時点でいかなる渡航制限も勧告していないが、ベル博士は今回のケースによって、感染がいかに容易に拡大し得るかが明らかとなるとし、航空機で移動する人たちは触れるものを制限し、手洗いを頻繁にするよう奨励している。
(Julie Steenhuysen記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)
 


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