そのとおり!正論です。久しぶりに「ステトスコープ・チェロ・電顕」さんのブログから

厚生行政の指導・監査に対する、日弁連の意見書 

行政による、医療機関への「指導・監査」は、医療を方に則り円滑に進めるために行われることに なっている。が、医療機関は、保険診療を行う上で、行政に指導される立場にある。本来は、契約関係で対等なはずなのだが、行政が許認可権を握るために、そ の関係は行政が実質的に上に立つ不平等な関係になっている。医療機関に問題があることもないことはないのだが、医療機関の生殺与奪の権利を持つ行政の指 導・監査は、場合により、医療機関に対して苛烈を極める。現行の指導・監査の問題は、

1)指導・監査が専ら医療費削減を目的とする経済的なものになっている。行政の定める煩雑な診療報酬規則に則り、医学的な根拠のない締め付けを医療機関に与えるのが、その目的になってしまっている。

2) 指導・監査は、その目的、実施理由等を明確にされておらず、密室で行われる。往々にして、法治ではなく、人治となる。非公開性により、行政は恣意的な行政 処分を下す可能性が高い。時に苛烈になる指導・監査は、医師を追い詰め、自殺にまで追いやる事例が生まれている。医師の基本的人権がなくぃがしろにされて いる。

3)根本的に医療費削減のみを目的として指導・監査が行われるために、医療内容の改善は疎かになり、医療機関に適切な医療を行う動機を失わせることになっている。結局、患者である国民にしわ寄せが及んでいる。

このように問題の多い、指導・監査であるが、密室で行われる行政であるがゆえに、公の問題になることが少ない。下記の通り、日弁連が、その問題を指摘し、改善を意見したことの意義は大きい。

これは、医療機関だけの問題ではなく、患者である国民に跳ね返る問題なのだ。


以下、MRICより引用~~~


日弁連、指導監査の改善意見書を採択

井上法律事務所 弁護士
井上清成

2014年10月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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1 日弁連・指導監査改善意見書
日本弁護士連合会は、2014年8月22日付けで「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」を取りまとめ、同月25日に厚生労働大臣と各都道府県知事にこれを提出した。この日弁連の意見取りまとめは、自殺した保険医の遺族らなどによる日弁連・人権擁護委員会に対する救済申立てを契機としたものである。

2 保険医等の適正な手続的処遇を受ける権利
日弁連・指導監査改善意見書は、保険医療の指導・監査の制度に関し、その対象となる保険医等の適正な手続的処遇を受ける権利を保障するため、次の7つの点について改善・配慮及び検討を求めた。
(1)選定理由の開示
(2)指導対象とする診療録の事前指定
(3)弁護士の指導への立会権
(4)録音の権利性
(5)患者調査に対する配慮
(6)中断手続の適正な運用
(7)指導監査機関の分離と苦情申立手続の確立


3 指導監査制度の改善を
この意見書は、権利の侵害に直面している保険医にとって、大きな後ろ盾になるであろう。また、指導・監査の改善を求める諸活動の支えにもなり、歴史的な意義が大きい。
厚生労働省地方厚生局と各都道府県は、日弁連・指導監査改善意見書に沿って、保険医と患者の権利擁護と公平公正で公開された指導監査制度の実現のために、
・運用については、直ぐにも改善できる点は即改善し、
・制度については、指導大綱・監査要綱などを速やかに抜本的に改め、
・法的には、患者・保険医の権利条項の全く欠如している健康保険法等の関連法規を、憲法の趣旨に沿って改善する
べきである。


4 人権の歴史は手続的保障の歴史
近代から現代にかけて、基本的人権保障の歴史は、大部分は「手続的保障の歴史」であった。人権擁護の歴史というのは、「悪い奴は厳罰に処してしまえ!」「なんで悪い奴をかばうんだ!」という情動的な処罰感情に対し、「そうであったとしても、適切な手続的保障をするのが基本的人権の保障である。」として冷静さを求める積み重ねであったと言えよう。
今も人権侵害の声は消えていない。「なんで不正請求や不当請求をする医者をかばうんだ!」という類いである。実は、この声は一般国民やマスコミからの声ではない。ほかならぬ医療者からの声である。
このような声を発する医療者は今も絶えない。しかし、日弁連の指導監査改善意見書は、このような人権侵害の情動から未だ脱却できていない医療者に対しても、冷水を浴びせかけたのである。
厚労省も都道府県も、そして、一部の医療者達も、日弁連・指導監査改善意見書をきっかけとして、「人権の歴史は手続的保障の歴史である」ということを認識してもらいたい。

5 国民が適切な医療を受けるために
日弁連・指導監査改善意見書は、指導・監査の対象となる保険医等の適切な手続的処遇を受ける権利(憲法31条)を保障し、その人格の尊厳等を守る観点から、現行の指導・監査について改善、配慮及び検討を求めたものである。
しかし、そこで指摘された指導・監査の問題点は、保険医等の権利を脅かすことを通じて、国民の医療を受ける権利に危険を及ぼすことを忘れてはならない。
保 険指導の運用が、保険医等に対する診療報酬の自主返還や、監査による保険医資格の取消等の不利益処分に結びつくものであり、手続の不透明性や密室性もあい まって、保険医等が、理由の如何を問わず指導対象に選別されることを避けたいという心理に陥ることは自然である。その場合、たとえば集団的個別指導を受け た保険医等であれば、何とかレセプトの平均点数を下げて個別指導対象に選定されることを避けたいと考えるし、それ以前に、集団的個別指導に選定されないよ うレセプトの平均点数を抑えることに腐心するということにもなろう。
保険医等が、患者のために何が必要かという観点ではなく、指導対象に選ばれないためにどうすべきかという観点から診療方針を決定するようであれば、患者が本当に必要な医療を受けられなくなるかも知れない。
経済的負担能力による差別なしに適切な医療を受ける権利のためには、国民皆保険制度の維持・拡充が必要であり、そのために指導・監査制度の存在意義がある。しかし一方で、行き過ぎた指導・監査は、保険診療を担う保険医等の人格の尊厳を脅かし、国民の適切な医療を受ける権利を空洞化させる危険を含んでいる。
したがって、国民の適切な医療を受ける権利の保障という観点から、現行の指導・監査について、日弁連・指導監査改善意見書の指摘にかかる改善、配慮及び検討を行うことが重要であろう。

6 指導・監査制度の改善に向けて
日弁連の指導監査改善意見書の内容は、もちろん指導・監査・処分制度のすべての問題点を網羅したものではない。むしろ適正手続保障(憲法31条)の重要なポイントを例示列挙したものと評しえよう。これらを補強し実践していくことは、むしろ医療者自らの課題である。
こ の意見書は、法律家的な発想には良くなじむ。問題は、違和感を覚える一部の医療者自身である。すべての医療者自らが人権感覚を身に付け、法律家や国会議 員・地方議会議員や患者団体と共に、共有した人権意識の下に、指導・監査そして処分制度の改善に取り組んでもらいたい。それこそが患者の適切な医療を受け る機会を保障することになり、国民皆保険制度の維持・拡充につながるものである。

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