そうなんだ~


総蛋白量の増加、安全性への影響は?【時流◆インフル4価】

有害事象に差はないが接種部位の腫れはやや大
 
2015年10月2日 (金)配信

2015-16年シーズンから4価になるインフルエンザワクチン。
1接種当たり総蛋白量が上昇することで安全性に違いは生じないのか。
臨床試験を主導した国立病院機構三重病院副院長(前臨床研究部長)の菅秀氏に聞く。
まとめ:軸丸靖子(m3.com編集部)

 
4価ワクチンで免疫原性は有意に上昇
 ワクチン1接種当たりの総蛋白量には、安全性への配慮から上限値が定められている。ウイルスを体内 に入れることによる副反応の発生率を低くする、ないしは発生しても軽症で済ませるためだ。上限値を引き上げるには、それによって副反応が増えることがない かどうか、特に小児において確認しなければならない。
 その臨床試験は菅氏の主導で行われた。対象は生後6カ月から18歳までの健常小児約400例。同院 と三重県内および全国数か所の小児科医院、計11施設でボランティアを募り、無作為に2群に分け、2014-15年シーズン用に製造された3価ワクチンを 約150例に(3価群)、それに世界保健機関(WHO)が「4価にするならば」として選定していたB型株もう1種を加えた4価ワクチンを約250例に(4 価群)、それぞれ接種した。4価ワクチンは国内4メーカーにそれぞれ製造してもらい、接種年齢を考慮したほか、安全性が懸念されるような基礎疾患のある児 は除外した。
 初回接種を行ったのは2014年10-12月。2回接種が必要な13歳未満には初回接種の約1カ月 後に実施し、接種前および各回接種1カ月後に血液を採取して、4種類のウイルスに対する免疫原性をそれぞれ評価した。インフルエンザワクチンには年齢に よって免疫原性に差があるため、この点の評価も行った。
 詳細な試験結果は菅氏が2015年10月末および11月の学会で発表予定だが、全体としては「海外 での報告同様、4価のうち3価目までについては従来のワクチンと同等の免疫原性を持つことが確認された。4価目については有意に免疫原性が勝るという証明 が得られた」という。
 効果については、まず懸念された“足の引っ張り合い”、つまりB型を2種類にすることで2種類とも 抗体が付かなくなるといった現象は起こらないことが確認された。A型2種類についても従来通りの抗体上昇が得られた。当然のこととして、4価目については 3価群に比べ有意に抗体が上昇していた。
 年齢によって4価目の免疫原性には若干の差があることも分かった。6カ月以上3歳未満、3歳以上6 歳未満、6歳以上13歳未満、13歳以上18歳未満の4群において3価群と4価群の免疫原性を比較したところ、4価目については13歳以上18歳未満の群 でのみ、抗体価の上昇に関する評価方法4項目中3項目で、統計学的に有意差がなかったのだ。
 「対象者数がもっと多ければ有意差が出た可能性もあり、このデータのみをもって結論を下すことはできない。有意差がなかった理由は明らかでないが、B型ウイルスに対する抗体はもともと付きが悪いことが影響しているのかもしれない」と菅氏。
 接種終了から1カ月目までの追跡中にインフルエンザを発症し、医療機関を受診した児は数人いたが、今回の試験デザインでは4価になったことでどの程度発症が抑えられたか、あるいは重症化予防ができたかは評価できなかったという。
3価同様の注意は4価でも必要
4価ワクチンの安全性については、アナフィラキシーショックなどの重篤な有害事象の発生のほか、接種部位の発赤、発熱などの軽微な副反応につ いても評価したが、3価ワクチンとの有意な違いはなかった。ただし、接種1日目の接種部位の腫張については、3価群の中央値が2cmだったのに対し、4価 群では同3cmと、有意に腫れが大きかった。
 「試験参加者に定規を渡し、母親なり本人なりに測って記録してもらった数字なので、どのくらい正確な値かは不明だが、統計学的には4価のほうが腫れたといえる」と菅氏。
 ただし、この腫脹が臨床的にどの程度の意味を持つかは、また別問題だという。
 「安全性に関する結果は臨床の先生方が気になるところだとは思うが、集団で見れば1cmの差でも、臨床的にはすごく腫れる子、あるいは全く腫 れない子がいる。今回の試験では総合的に見て4価ワクチンの安全性に問題はないという結論だったが、統計的に有意ではなくても、軽微な副反応の発生は4価 群で若干多いような印象はあった。4価だから特に心配ということはないが、4価でも3価同様の注意が必要と考えてほしい」(同氏)。
 ワクチン1接種当たりの総蛋白量の増加に関する懸念については、2011-12年シーズンの経験も参考になるのではないかという。このとき は、ある年齢層の小児においてインフルエンザワクチンの総蛋白量が大きく上昇した。1歳未満には0.1mL、1歳以上6歳未満には0.2mL、6歳以上 13歳未満には0.3mL、13歳以上は0.5mLという小刻みな1回接種量を用いていたのが、3歳未満は0.25mL、3歳以上は0.5mLという2段 階になったからだ。
 「例えば6歳未満の児には前年の2.5倍の蛋白量を接種したことになる。そのときの副反応がどうだったか、腫れがどうだったかということは1 つのメッセージになるだろう。無論、総量に違いはあるが、蛋白量の増加という点については、1つの参考にはなるのではないか」と菅氏は話している。

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