「事業仕分けは無駄の削減が目的のはず。しかし、医療については、国家的な優先順位が高いはずではないのか。医療を事業仕分けの対象とすべきなのか。政府の見識が問われる」(公益側:小林麻理・早稲田大学大学院公共経営研究科教授)全くその通り。

中医協が「事業仕分け」を批判、三者の意見が珍しく一致

SonetM3   2010年12月15日
 「補助金と診療報酬は、目的が違う。事業仕分けの対象にすること自体、おかしい。仮に診療報酬で評価していることを理由に補助金をやめるのであれば、他にもたくさん該当するものがあるのではないか。なぜこれだけを取り上げたのか。非常に理解に苦しむ。中医協として意見を出すべきではないか」
  12月15日の中医協総会で、こう問題提起したのは、嘉山孝正・国立がん研究センター理事長。嘉山氏が言及した「これ」とは、11月の行政刷新会議の事業仕分けの対象となった「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」(『「医師確保、救急・周産期対策の補助金」は“見直し”、事業仕分け』を参照)。2009年の事業仕分けでも対象になり、2010年度予算は、概算要求の574億円から308億円へとほぼ半減。2011年度の概算要求は297億円ですが、仕分けの結論は「見直しを行う」とされ、仕分け人13人中、12人が「診療報酬改定で対応可能な事業の廃止」を求めています。
 中医協は支払側、診療側、公益側の三者構成で、議論が対立するのが常ですが、この事業仕分けについては三者の意見が一致、嘉山氏に続き、批判の声が相次ぎました。下記はその主なものです。
 「腹が立っている。補助金を減らす理由として、診療報酬が使われるというこの国は、いったい何なのか。はっきり言って失望している。この国の医療提供体制を良くするために、国は医療に対する思いから補助金をつけているのではないか。診療報酬と補助金はセットであるべき。中医協として意見を言うにも値しない」(支払側:白川修二・健康保険組合連合会専務理事)
 「嘉山先生とほとんど同じ意見。保険財源でできるだけ国民のための医療を実施しているが、考え方としては補助金も必要。補助金と診療報酬のあり方を整理する必要があるのではないか。両者の役割は違うはずであり、中医協としての見解があるべきではないか」(診療側:西澤寛俊・全日本病院協会会長)
 「白川委員と意見が一致することはほとんどないが、今回は賛成。補助金と診療報酬は性格が違うが、国は基本的には予算を減らしたいと考えているのではないか。診療報酬では国の負担は4分の1、一方、補助金は予算額のすべてが国の負担。この違いをどの程度、意識していたのか。また、事業仕分けで根源的な議論がなされていたのか。我々の責務を考えたときに、『中医協としては遺憾』であることを指摘すべき。この政権、この与党の腰骨が定まらないことに対して、意見は出したい」(診療側:安達秀樹・京都府医師会副会長)
 「今改定でプラス改定にはなったが、まだ診療報酬は足りない。診療報酬を補助金削減の手段に使うことはやめてほしい」(診療側:鈴木邦彦・日本医師会常任理事)
 「事業仕分けは無駄の削減が目的のはず。しかし、医療については、国家的な優先順位が高いはずではないのか。医療を事業仕分けの対象とすべきなのか。政府の見識が問われる」(公益側:小林麻理・早稲田大学大学院公共経営研究科教授)
 また行政刷新会議の事業仕分けには法的根拠がない一方、「中医協には、法的根拠がある。法治国家でありながら、法を無視して意見を言うのは何ごとか」(白川氏)といった点も、中医協委員が事業仕分けを問題視している理由。
 こうした意見に対し、森田朗・東京大学大学院法学政治学研究科教授は、予算の執行率の低さという別の視点から指摘、「執行率が半分程度だから、予算もそれに合わせて減額されたのではないか。なぜ執行率が低いのか。低い状態で反論するのは苦しいのではないか」と述べ、補助金の削減には一理あるとしました。2009年度は428億円の予算に対し、執行率は56.6%にとどまっています。
 執行率の低さについて、岩渕豊・厚労省医政局総務課長は、国はここ数年、医師確保対策等の予算を急速に増やしたものの、都道府県の予算化とはタイムラグがある(医師確保等対策の補助金は、都道府県が事業化、それに国が補助する形で、都道府県の負担も伴う)、事業の組み方に問題がある(どんな事業であれば都道府県が一番実施しやすいか、工夫が必要なことなど)、といった事情があると説明。
 様々な意見を踏まえ、結局、2011年度予算編成が目前に迫っているため、効果は期待できないものの、中医協として本事業仕分けに対し意見を出すことになりました。

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